
親が施設に入居した後の自宅売却|名義・本人の意思・代理権の確認順
親が施設へ移り、家が空いた。これからの維持費や管理を考えて売却を検討しても、「子どもが代わりに手続きを進められるのか」「まず査定を頼んでよいのか」と迷うことがあります。
最初に確かめるのは、売却価格よりも登記上の名義・本人の意向・手続きの権限です。施設に入居しただけで、家族に売却する権限が移るわけではありません。三つを分けて確認すると、次に誰へ何を相談するかが見えてきます。

図:売却の話を進める前に整理したい三つの確認事項
1. 登記上の所有者を確かめる
固定資産税の納税通知書だけでは、現在の所有権や共有者を正確に確認できないことがあります。まず登記事項証明書を取り、親の単独名義か、配偶者やきょうだいとの共有か、過去の相続登記が残っていないかを見ます。
共有名義や相続登記の未了が分かったら、査定を依頼するときにもその状況を伝えてください。誰が所有者なのかで、売却に必要な同意や段取りが変わるためです。証明書が手元にない場合は、取得方法を法務局や司法書士に確認できます。
2. 本人の意向を、家族の希望と分けて聞く
家族にとって管理が難しくなっていても、本人が家を残したい、荷物を整理してから考えたいと思っていることがあります。反対に、本人が売却を望んでいても、契約の意味や条件を理解し意思を伝えられるか、個別の状況を慎重に確かめる必要があります。
施設に入居していることだけで、本人の判断能力の有無が決まるわけではありません。本人と話せるときは、「家をどうしたいか」「家財はどうしたいか」「売却後の住まいや費用をどう考えているか」を、急がせず確認しましょう。話した内容や確認した時期を家族でメモしておくと、後で専門家へ相談するときに役立ちます。

3. 家族が代理するなら、権限の範囲を確かめる
親子であっても、子どもが親の代わりに売買契約へ署名できるとは限りません。委任状、任意後見契約、成年後見制度など、本人の状況や契約の内容によって確認事項が異なります。「家族だから大丈夫」と考えて契約や登記の手続きを始めず、権限を確認してから進めましょう。
成年後見人等が本人の居住用不動産を処分する場合は、原則として事前に家庭裁判所の許可が必要です。施設に入る前に住んでいた家も、居住用不動産に含まれる場合があります。保佐人・補助人については、不動産を処分する代理権が付与されているかも確認が必要です。具体的な事情により判断が異なるため、管轄の家庭裁判所や弁護士・司法書士へ確認してください。
図:相談先によって確認できる内容は異なります。価格の査定が代理権や裁判所の許可に代わることはありません。
空き家の管理と売却準備も並行して整理する
手続きの確認に時間がかかる間も、郵便物、鍵、室内の換気や通水、庭木、火災保険など、自宅の管理は続きます。遠方に住む家族が管理する場合は、誰がいつ訪問し、緊急時に誰へ連絡するかを決めておくと安心です。維持費の支払い元や家財の扱いも、家族間で共有しておきましょう。
工事や家財の処分は、費用をかける前に売却方針や本人の意向を確かめてください。片付けや修繕を先に済ませないと査定できない、というわけではありません。現状を見てもらい、何を残すか・直すかを相談してから決められることもあります。
相談前は、分かることだけメモすれば大丈夫
資料が全部そろうのを待たず、次の項目を分かる範囲で書き出しておくと話が進みやすくなります。
- 登記上の所有者と共有者(未確認ならその旨)
- 本人が家について話した内容と、確認できた時期
- 施設へ移った時期、自宅の鍵や郵便物、現在の管理状況
- 住宅ローンや抵当権の有無
- 家財についての本人・家族の希望
- 委任や後見の手続き、専門家への相談状況
登記が分からない、本人の意向をどのように確認すればよいか迷う、という状態もそのまま伝えて構いません。査定で分かるのは価格の目安であり、売却できる権限や家庭裁判所の許可ではありません。法的な確認と価格の確認を、別の相談先で並行して進める方法もあります。
よくある質問
親が施設に入居したら、子どもが家を売れますか?
施設に入居したことだけで、子どもに売却権限が移るわけではありません。登記上の所有者と本人の意向を確認し、代理する場合は権限の根拠を確かめます。
後見人が選任されていれば、そのまま売却できますか?
居住用不動産の処分では、原則として事前に家庭裁判所の許可が必要です。家が居住用に当たるか、許可の申立てに何が必要かは、具体的な事情を家庭裁判所や専門家へ確認してください。
売却を決める前に、査定だけ頼めますか?
価格の目安を知る相談は、売却を決める前にできる場合があります。ただし、査定を受けても代理権や処分許可が得られるわけではありません。手続きの確認状況を不動産会社にも伝え、価格と法的な判断を混同しないようにしましょう。
価格の相談と、売却手続きの確認を分けて進める
施設へ移った後の自宅については、「売るかどうか」だけでなく、名義、本人の希望、代理権、空き家の管理を順番に確認することが大切です。法的な手続きは家庭裁判所や弁護士・司法書士へ、価格や販売準備は不動産会社へ。それぞれの相談先を分ければ、何から始めるかを整理できます。
法律上の代理権や家庭裁判所の許可は専門家への確認が必要です。価格や自宅の管理、売却までの段取りについてはお問い合わせください。
不動産売却について相談する※成年後見制度と居住用不動産の処分に関する一般的な案内です。個別の法律判断ではありません。具体的な手続きは管轄の家庭裁判所等へご確認ください。
